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本研究プログラムにおける中心研究者(山海嘉之)が『サイバニクス』技術を駆使した最先端人支援技術研究を推進する上で必要な研究テーマをそれぞれの分野の先生に加わっていただき、推進しています。

慢性期脊髄損傷に対する自家嗅粘膜移植

岩月幸一

大阪大学 大学院医学系研究科 脳神経外科 講師

研究協力者

吉峰俊樹

慢性期脊髄損傷においては、元来中枢神経が軸索伸長に拒絶的であるのに加えてこれを許容しない瘢痕組織が形成さている。神経再生を成功させるためには、失われた神経細胞の補充、軸索伸長を促進させる各種の栄養因子、さらに軸索伸長を許容する足場の三つが必要である。嗅粘膜は神経細胞を補填することが期待しうる神経幹細胞と、各種の軸索伸長栄養因子を分泌し高い軸索伸長効果が確認されている嗅神経鞘細胞を含み、それ自体が生体内で例外的にほぼ生涯にわたって神経再生がみられる部位であることから、理想的な自家移植材料と考えられている。慢性期脊髄損傷に対する嗅粘膜移植法は2001年から欧州を中心に施行されているが、その期待される嗅粘膜の神経再生への関わり、つまり嗅粘膜が期待通りの軸索伸長効果を有するのか、また脊髄内に移植された嗅粘膜が神経軸索伸長の足場となりうるのか、また臨床上その効果発現のために必要な条件は何であるのか明らかにされていない。
これらにつき前半における基礎的検討の結果とこれまでの臨床研究の成果をもとに後半の課題を明らかにする。

基礎研究

【方法】 (in vitro model) 大脳皮質―Matrigel 3次元共培養系を用いて、細胞なしコントロール群、嗅粘膜由来細胞群(以下OMC群)、呼吸粘膜由来細胞群(RMC群)の3群を形成し、伸長軸索と各細胞群に対する相互作用および各細胞群から分泌される栄養因子の解析を行った。

(in vivo model)8週齢SDラットに10gの分銅を7.5cmから落下させる圧挫損傷モデルを形成し、損傷2週間後に細切した嗅粘膜組織およびコントロールとしてOECおよびNPCが含まれていないとされる呼吸粘膜組織を移植し、移植8週間後に行動解析および免疫染 (Neurofilament)による解析を行った。

【結果】(in vivo model)嗅粘膜群において有意にB.B.B Scoreの改善を認め、免疫染色において移植された嗅粘膜を通過する多くの神経軸索を確認した。(in vitro model) OMC群はRMC群やコントロール群に比べ有意に軸索伸長促進効果を認めた。伸長軸索はOEC細胞上を伸長し、OECが伸長軸索の足場になっていた。また、OMC群はNeurotrophin-3およびHepatic growth factorが有意に分泌されていることが示された。

【結語】嗅粘膜は軸索伸長効果を有し、かつ再生軸索の足場となっていることが示唆された。

臨床研究

損傷遠位の脊髄運動神経の健全性は、移植治療の成否に影響する可能性が考えられる。我々は損傷遠位の脊髄の残存神経機能の一つの評価としてinvoluntary muscle movement (IMS)評価を取り入れ臨床研究を行ってきた。現在まで4例実施し、安全性に問題はみられなかった。全例ASIA grade Aであったがうち2例で下肢随意性の筋電図の発現を認め、ASIA grade Cへと改善した。この2例ともIMSが術前術後とも高率に認められていた。IMSの出現は損傷遠位の運動神経の回復を示す間接的指標であることから、このIMSの存在が脊髄損傷に対する移植再生医療成功の一つの前提条件となるかもしれない。 

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